超長編のサスペンスミステリーです。お値段がお高めですが、それなりの内容が詰め込まれていると思います。
中学の修学旅行の京都で班行動中に、一人の女の子が突然姿を消した。
20年後、その時一緒に行動していた同級生の元にメールが届いた。
「わたしを憶えていますか?」・・・と。
本の厚みの割には、飽きることなく読了出来ました。
長編の場合、出だしや真ん中あたりで一度中だるみして乗り越えに時間がかかる事があるんですが、どちらかというと地味な展開だし、起伏も激しくないし、淡々と綴られている感じだったのに、この作品には一度も引っかかりませんでした。
以下内容にふれています。
20年前、学級崩壊の進む中での修学旅行。その旅行中の出来事で、当時色々な憶測から辛い立場に立たされた傷を抱えて大人になった彼らが、それぞれのの人生を抱えて再会。それをきっかけに当時希薄だった友達関係を深めてゆくことになりました。
たとえ何十年会っていなくても、名前や顔を思い出した瞬間に元のクラスメートに戻れると言う体験は誰にでもあると思います。それが彼らには友達の失踪という傷によってより強い連帯感を感じたのでしょう。
そして、次々と周りで起こる事件を通して、それぞれの今抱えている問題や彼らの生きてきた人生を知ることになります。
やがて彼らの知りたかった事が明らかになりますが、その結末はあまりにも理不尽なものでした。
元教師の口から出た言葉は謝罪ではなく開き直りのうえ、その責任を彼らに押し付けた暴言でした。
逆恨み??ですよねぇ、これって。
彼女がなくなってしまった事は事故でも、やっぱり当時教師であった自分たちの責任ですよね。
教師とは言っても恋愛もすれば失恋もするし、その結果とんでもない事に巻き込まれてしまう事もあるだろうけど、やっぱり人として間違っていたんだろうと思います。
結局、彼女はその時に隠した秘密の重さに耐えかねて「壊れて」しまっていたのだから・・。
そんな彼女の投げ込んだ一粒の石の波紋で、今まで築いてきたものがあっという間に崩れ、日常生活の脆さに気付かされます。
しかし、彼らにとってこれでようやく過去の傷と決着がつくのでしょう。その代償は小さくはなかったけれど、これからの彼らの生きる道の上で、新たな起点となる事と思います。